すがすがしい晴れた昼の公園。昼間ヒマを持て余しているときの私は、たまに公園のベンチで読書を堪能する。いつもの定位置のベンチに腰をかけ、身を据える。すると、若い男二人が、すぐ隣に並ぶベンチにいることに気づく。
こちらの近くに座っている方は、華奢な身体つきの幼顔の男だった。そして、奥に腰を据える男は眼つきの鋭い、だがどこか無邪気さを含む男。
前、自分の酒場に客として来ていた二人組みだった。
「なぁ、お前。出会いっつうのは、偶然だと思うか?」
眼つきの鋭い男が不意に隣の男に話を振る。手前の男はその言葉に
「はぁ? 急に何言ってんの? 君だって僕よりも唐突じゃないか」
ふと顔を顰めながら答えを返し、続けて
「けど……ふぅん? 出会いねぇ……。偶然、というよりも、縁、なのかも知れないよね。ほら、『袖触れ合うも他生の縁』ってよくいうじゃない?」
「会話がいつも唐突な物って言ったのはお前だろう?……縁、か。じゃぁそれは必然的に運命が定まってるつうことになるのか?」
奥の男が再び問いを重ねる。
「必然……なのかな? けどこの世に必然な出来事なんてあるのかなぁ? 現実なんて実際曖昧過ぎると思うんだよ。色々あるけど、すべてが自分の思い通りになる訳でもないしさ。ま、それが人生の醍醐味っちゃぁそうなんだろうけど」
「当たり前だ。人生は曖昧だからこそ、面白いんだろうが。そんな中で、もがいたりすっ転んだりするのがいいんだろう? ま、世渡り上手な奴もいるにはいるがな」
奥の男は無邪気に笑みを零しながらそう言葉を紡ぐ。
「僕は全然世渡りって上手くないなぁ。よく周りからは『上手そう』って言われるけどね。多分君よりももがいて、あがいてるような気がするよ」
手前の男が意外なことを口にした。私も少なからずそう思っていたからだ。
「お前は感情の波が激しいからな。それを上手く抑えることがヘタクソなんだよな。俺はどっちかちゅーと、理性働かすことが得意だしな。まぁそれはそれでいい事だと思うぜ? 人間自然体が一番ってな。あんまりつくり過ぎるしんどいもんだ」
奥の男が微かに視線を遠くへ飛ばしながらそんなことを言ってのけた。
「まぁね。別に僕は僕のままでいいと思ってるし。……まぁそうだね。僕のことを解かってくれる人間と出会えた時は、これは必然だったんじゃないかと思う。人間絶対に一生の内に一人はそう言う相手が現れるんじゃないかと思うんだ。そう思ってでもないと生きていけない。だから、人生を悲観している人を見るとクソむかつくね」
その言葉に奥の男はぶはっと噴出すと笑い声を上げ、
「お前らしいなぁ。けどそう言う考え方はいいかもな。前向きなことにこしたこたぁねぇし。自分が変わろうとしなきゃ、なんもかわんねぇしな、実際。だが、今まで生きてきた短けぇ自分の人生振り返ってみると、すべてが必然だったんじゃないかと俺は思うぜ。自分の性格形成にすべてが関与してるから、今、ここに、今の俺がいる訳だ」
奥の男は未だ笑いを堪えられずに、だが、真剣みを帯びた声でそう言っていた。
「まぁ、そう言う考え方もあるんだろうね。何らかの出来事に、出会った時点では偶然でも、後から振り返ってみると必然だったってことなのかもね」
手前の男は相手の言葉を吟味するようにそう答えを返した。
「結局あれだな、偶然や必然って言うのはやっぱり自分の解釈次第ってわけだよな。自分に都合のいいように考えるのが一番か。まぁそんなもんだろうな」
奥の男は納得したかの様にそう言うと、不意にこちらを見た。
「ところであんた、こないだの……酒場のマスターだよな?」
ずばりと言い当ててくる。その言葉に手前の男も振り返り、
「うわっ! びっくりした。ほんとだ、マスターだ」
続けてその男はこちらの手元を見て、
「いつもここには本を読みに?」
そう聞いてきた。
「ええ、まぁそんなところです」
曖昧な答えを返すと二人が声を揃えて言った。
『偶然だな(ね)』
次の瞬間、二人は顔を見合わせて一気に噴出した。
なるほど、こういう時は偶然なのだと、私は納得した。
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