「なぁ、あいつっていつ見ても暗いよなぁ。何でいつも教室の隅で本読んでんだ?」
俺の言葉に、前の席の女はこちらを向いた状態のまま頬杖をついた。
「……あぁ、中野? あんたにソンナこと言われたくないと思うわよ? きっと」
「うっせぇよ。気になるんだから、しゃぁねえだろ」
そういうと、女は一瞬きょとんとした顔を見せ、つぎに微笑を湛えた。
「あんたはさ、自分が何か持ち味って言うのを持ってると思う?」
「んぁ? 俺か? 俺はそうだなー。さっぱりしてるとこだな、塩味みたいに」
胸を張ってそう答えると、
「塩味は、辛いじゃないの……。まぁ、いいわ。人を食べ物に例えるとさ、誰もがみんな同じ味じゃないって思わない?」
「……んん? そうだな、人間みんな色々な性格だしな」
素直に同意を述べた。
「だったら、味のない人間なんていないんだから、あんたが中野の『持ち味』を発掘すればいいのよ。そうしたらあんたもすっきりするし、
中野のこともちょこっと分かるはずよ」
なるほど、と思い俺は今度あいつに声を掛けてみようと、そんなことを思った。
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